ウェルビーイングを測る指標とは?ビジネスに応用して働く人の幸福度を測るポイント

ウェルビーイングのイメージ画像

企業と従業員の関係性や従業員のワークライフバランスが見直されている中、これからの時代の中心的な考え方として注目を集めているのが「ウェルビーイング」です。

ウェルビーイングの向上が企業の業績向上や価値創出に有効だと分かっていても、どのようにウェルビーイングを測ったらよいか分からない方も多いのではないでしょうか?

この記事ではウェルビーイングの意味、そして測定方法について解説します。

ウェルビーイングとは?

まずは「ウェルビーイングとは何か?」について解説します。

「ウェルビーイング」とは
ウェルビーイング(Well-Being)とは「幸福」や「健康」という意味を持つ英語です。ウェルビーイングに初めて言及したのは1946年の世界保健機関(WHO)憲章で、以下のように定義されています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態(Well-being)にあることをいいます。」(出典:世界保健機関(WHO)憲章とは )

なぜ今ウェルビーイングが注目されるのか

では、なぜ今ウェルビーイングが注目を集めているのでしょうか?

ウェルビーイングが注目を集めている理由として「多様性を認める社会」「働き方改革の推進」「SDGsの目標に掲げられている」「新型コロナウイルスの感染拡大」などがあります。特に働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大で自分らしい働き方を求める人が増えており、「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態(Well-being)」という考え方のウェルビーイングに通じる考え方であることから、注目を集めています。

ビジネスの現場でできるウェルビーイング向上の施策とは?

このように注目を集めているウェルビーイングですが、ビジネス現場ではどのような施策によってウェルビーイングを向上させることができるのでしょうか?ここでは代表的な施策と効果を高める方法を紹介します。

従業員のウェルビーイングの向上に寄与する施策

従業員のウェルビーイングの向上に寄与する施策として、以下の4つがあります。

・福利厚生の充実

・コミュニケーションの改善

・労働環境の見直し

・経営層、マネジメント層の意識改革

ウェルビーイングを取り入れ、個人や組織が「心身ともに健康で社会的に満たされた状態」を作るためには従業員の働く環境の見直しが必要です。また、ウェルビーイングは中長期的な取り組みとなるため、経営層やマネジメント層の意識改革も必要です。

ウェルビーイングの達成度を測るためには指標が必要

従業員のウェルビーイング向上に取り組むのであれば、コストをかけて施策を実施することになります。このため、ウェルビーイングに取り組んだ効果の測定が必要です。また、施策に取り組む前に、何をどこまで達成したいのかを定め、施策に取り組んでからも進捗や実現度を測る必要があります。例えば「定期的にアンケートを取る」ことで、従業員の気持ちにどう変化があったのかなど、一目で分かります。

ウェルビーイングを測る指標①ギャラップ社によるウェルビーイングの「5つの構成要素」

ウェルビーイングを測る1つめの指標はギャラップ社によるウェルビーイング「5つの構成要素」です。世界規模での調査やコンサルティングを行うアメリカのギャラップ社が提唱した指標です。ここではウェルビーイングの効果なども交えて「5つの要素を紹介」していきます。

Career well-being(キャリア ウェルビーイング)

Career well-beingとは、仕事のキャリアから私生活で継続していることを含めた総合的なキャリアの幸福度です。仕事の経歴、役職はもちろん、家事、育児、子育て、ボランティア活動、趣味などが要素として含まれます。

Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)

Social well-beingとは一言で言うと「人間関係に関する幸福度」です。家族、友人、職場の同僚、上司など、自分を取り巻く人々と日々の生活で良好な人間関係を構築できているか、広い交友関係を構築できているかなどです。

Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)

Financial well-beingとは経済的な幸福度を得られているかどうかです。安定した収入を得られているか、資産を確保しているか、安心して満足するような生活ができているかなどです。

Physical Wellbeing(フィジカル ウェルビーイング)

Physical Wellbeingとは心身の幸福度を表します。仕事にやりがいがあるか、前向きな気持ちで日々を過ごせているかなどです。自分がやりたいと思ったことを不自由なくこなすことができる健康状態が望ましいです。

Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)

Community well-beingとは地域社会での幸福度を表します。家族、友人、職場、学校など、自分が所属しているコミュニティでつながりがあるかどうか、充実度が得られているかどうかを指します。

ウェルビーイングを測る指標②国連「世界幸福度ランキング」

ウェルビーイングを測る2つめの指標は国連の「世界幸福度ランキング」です。ここでは「世界幸福度ランキング」の指標について紹介していきます。

「世界幸福度ランキング」とは

「世界幸福度ランキング」とは国連(国際連合)が発行する世界各国の幸福度に関する報告です。国内総生産(GDP)などの経済指標だけでは豊かさや幸福度は表せないとの考えに基づいて2012年から毎年発行されています。150以上の国・地域における幸福度を数値化し、ランキング形式で発表しています。世界幸福度報告では、人々の主観的幸福(主観的ウェルビーイング)を測定する方法として「生活評価」と「感情」の2つを概念枠組みとして採用しています。

国民1人当たりのGDP

「国民1人当たりのGDP(国内総生産)」は経済的な豊かさの指標であり、国民の富裕度について計測しています。

社会的サポートの享受

「社会的サポートの享受」は、家族、友人など、困ったときに頼れる場所があるかなどが指標となっています。社会的に取り残される人はいないかなども含まれます。

健康寿命

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。食料面や衛生面が整っているか、必要な医療が行き届いているかなども評価ポイントです。


人生において自由な選択肢があると感じているか

「人生において自由な選択肢があると感じているか」は、自由な選択肢が多ければ多いほど幸福で豊かな人生が送れると考えられており、指標の1つとして用いられています。思想、宗教、職業、社会などが評価ポイントです。


気前のよさ、他者への施しを行っているか

「気前のよさ、他者への施しを行っているか」は、欧米では他者への慈善活動は寛容さの評価となっています。慈善団体への寄付金額とGDPからの推計値が評価対象となっています。

国内での汚職や政治の腐敗

「国内での汚職や政治の腐敗」は、「汚職は政府全体に広がっているか」「汚職は企業全体に広がっているか」という質問に対する回答の平均値です。国がクリーンで適切な政策を行っている場合、幸福度は高くなります。

ウェルビーイングを測る指標③OECD「より良い暮らし指標」

ウェルビーイングを測る3つめの指標はOECDの「より良い暮らし指標」です。ここでは「より良い暮らし指標」の指標について紹介していきます。

OECD(経済協力開発機構)による「より良い暮らし指標」とは

OECD(経済協力開発機構)の『より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)』 は、これまでのGDP(国内総生産)以上に、人々の暮らしを計測、比較することを可能にするインタラクティブな指標です。暮らしの11の分野(住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランス)について、OECD加盟37カ国とブラジル、ロシア、南アフリカを加え、あわせて40カ国の指標を比較します。

ウェルビーイングを測る指標④「ポジティブ心理学」における5つの指標

ウェルビーイングを測る4つめの指標は「ポジティブ心理学」における5つの指標です。ここでは「ポジティブ心理学」における5つの指標について紹介していきます。

ポジティブ心理学とは

ポジティブ心理学は、「人が幸せに生きること」を科学的に追求する学問です。アメリカのペンシルベニア大学マーティン・セリグマン教授により提唱されました。ポジティブ心理学が追求する「幸せ」はウェルビーイングという言葉で表現されており、現在、ウェルビーイングの指標に多く用いられています。

ポジティブな感情(positive emotion)

1つめは「ポジティブな感情」です。具体的には「愛」「喜び」「笑い」「感謝」などを指します。ポジティブな感情でネガティブな感情を打ち消すことで回復力が早まり、思考や行動の選択肢が広がります。

没入・没頭(engagement)

2つめは「没入・没頭」です。何かに夢中になって没入・没頭することで集中力が高まり、仕事の効率や生産性を高めることができます。スポーツ選手が体感する「ゾーン」の状態です。

ポジティブな人間関係(positive relationship)

3つめは「ポジティブな人間関係」です。友人やパートナー、仕事の仲間など、他者との関係やつながりは幸福度と大きく関係します。そして、「他者に貢献することが自分も幸せになれる」ことが研究で明らかになっています。

意味(meaning)

4つめは「意味」です。これは価値観や人生の目的に関する要素です。人生の中で何が重要なのか、何を優先にすべきなのかを明確にし、その取り組みを増やすことで人生の幸福度が向上すると言われています。

成功・達成感(achievementまたはaccomplishment)

5つめは「成功・達成感」です。勝利や成功体験はポジティブ感情を生み出す要素の1つです。価値のある目標を追求する生き方が幸せな生き方とされています。また、成功や達成感はポジティブな人間関係も生み出します。

指標を導入する際に注意すること

ウェルビーイングを測る指標は国際連合が定めた世界規模での指標から、心理学など研究分野から提唱された指標までさまざまあります。自社が「何のためにウェルビーイングの指標を導入するのか」を見極め、各指標の特徴に応じて柔軟に導入する必要があります。また、指標を導入して終わりではなく、進捗モニタリングや評価を定期的に行い、PDCAを回していくことが大切です。

まとめ

この記事ではウェルビーイングの意味、そして測定方法について解説しました。

ウェルビーイングはもともとは世界保健機関(WHO)憲章で用いられていた言葉でしたが、会社と従業員の関係や従業員のワークライフバランスが見直される中、これからの時代の中心的な考え方として注目を集めています。

ウェルビーイングの指標には”ギャラップ社のウェルビーイング”「5つの構成要素」”、”世界幸福度ランキング”、”「ポジティブ心理学」における5つの指標”があります。

自社への導入に当たっては導入の目的を見極め、自社に適切な指標を用いていきましょう。

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