定着率向上に役立つツール導入のメリットと選び方のポイント

定着率向上

少子高齢化により働き手不足が進行しています。また、多様な働き方が推進され、従来ほど転職へのネガティブなイメージが無くなりつつあります。優秀な人材ほど、自身のキャリアアップを見据え、より成長が見込める企業を選びやすいという声もあるため、既存社員のエンゲージメントを高めることが、将来的な企業成長を左右するでしょう。

一方で、従業員のコンディションを可視化し、モチベーションアップや離職防止を実現する定着率向上ツールが多くあり、導入する企業が増えています。本記事では、ツール導入のメリットと選び方について、解説します。

定着率を下げる要因

厚生労働省が令和2年に公開した「雇用動向調査」および「若年者雇用実態調査」の結果から、代表的な離職理由を5つ紹介します。

人間関係

離職理由に「職場の人間関係が好ましくなかった」と回答した人は、女性で約15%以上、男性で約9%となっており、前年に比べ増加傾向です。また、35歳未満の若年層においては、離職者の4人に1人が人間関係を理由として挙げており、早期離職の引き金になっていることがわかります。

人間関係の悩みは、上司との関係や職場の雰囲気など日々のストレスに直結するものや、上層部の態度に対する不満や不信感、パワハラやセクハラといった深刻なものまで含まれます。具体的には、上司が部下に仕事と責任を押し付ける、過度に問い詰めて精神的に追い込む、プレッシャーをかけるのみでフォローが無いなど、上司の優位な立場を利用した行動により、部下が退職に至ってしまうようです。

現場のトラブルは人事や経営層から見えづらいため、過度な残業が発生していないかや、従業員満足度が下がっていないかなど、会社として組織の健全性をチェックし、離職の兆候を察知できる仕組みが必要です。

適正な評価がされていない

給与が少ないことを理由に挙げている割合は、全体では男女ともに1割程度ですが、若年層においては約23%と高く、入社後半年~1年の間で昇給やボーナスの査定をきっかけに離職を検討するようです。部下に対する好感度で上司の評価が左右し、不公平感が生まれるケースや、チャレンジングな仕事での成果を認められず、会社への貢献度が感じられないケースなどが想定されます。

仕事へのやりがいが低下すれば、離職に結びつきやすくなります。従業員のモチベーションを維持するためには、明確な評価基準に則り、人による甘辛を是正した評価が重要です。

教育やフォロー体制が整っていない

男性の約5%、女性の約3%が、自身の能力や個性、資格を生かせないと感じて離職しており、若年層では35%以上が離職理由に挙げています。成長意欲の高い若手社員にとって、将来に向けたキャリアステップやスキルアップが描けないことは不安に感じるでしょう。

計画的な育成プランや個人に寄り添ったフォローが無ければ、優秀社員は更に成長できる企業へと移ってしまいます。これからは、多様な個性や価値観を持つ人材が活躍できる機会作りや、個々のキャリア自律を支援する育成に、企業は目を向けるべきでしょう。

労働時間が長い

労働時間や休日などの労働条件が悪いため離職した人は男女ともに10%を超えています。従来より日本人の労働時間が長いことは問題になっており、働き方改革により生産性を重視する考え方が定着しつつありますが、労働条件の整備が間に合っていない企業や組織が未だ多く存在することを示しています。

慢性的な長時間労働は十分な休息や睡眠が確保できないため、体調面の不調を招き、プライベートとのバランスが保てず精神的なストレスにつながります。健全な労働環境を確保するために、柔軟な働き方を制度として取り入れたり、メンタルヘルスチェックなどで心身の変化を早期発見するなど対策が必要です。

実務で成長を感じない

従来に比べ、若手社員は専門職志向が強く、自身のキャリアアップを軸に自ら仕事や環境を選んでいく傾向が強くなっています。周囲の先輩を見て、数年度の自分がどの程度のポジションかやどんな能力を身につけているかがわかれば、早めに転職へと舵を切ることもあるでしょう。もしくは、画一的な育成に物足りなさを感じ、外資系やベンチャー系で経験を積むといったように、より自身の成長スピードを加速させる企業へ乗り換えることもあります。企業は、長年培ってきた育成方法を脱し、現代のビジネススピードや若手のキャリア志向を考慮した人材開発が求められています。

定着率向上に役立つツールとは

定着率向上を目指す場合、まずは組織や従業員の状態を可視化し、現状を把握する必要があります。定着率改善を目的としたツールを使えば、従業員の満足度やストレスチェックが効率的にでき、要因を分析して的確なマネジメント施策が実行できます。そのほかにも、離職リスクが高い社員を察知してアラートを挙げたり、組織と従業員の相性を診断するなど、ツールによりさまざまな機能が備わっています。

テレワークを実践する企業では従業員の様子が直視できないため、定着率改善ツールの重要性はますます高まるでしょう。

定着率向上に役立つツールのメリット

ツール活用によるメリットを4つ紹介します。

エンゲージメントの可視化

人事における「エンゲージメント」とは、従業員が企業に対し愛着心や思い入れがある状態で、企業と従業員がお互いの成長を目的に絆を深めていく関係を表します。エンゲージメントは定着率のバロメーターにもなるため、ツールで可視化することで低い従業員を特定でき、タイムリーなフォローや配置検討などを実行できます。

モチベーションの向上

定着率向上ツールでは、モチベーションのアップダウンが把握できるため、低下している従業員に対し、1on1など対話の機会を設けて本音を聞くことで、モチベーションの向上が見込めます。ツールで可視化されたデータを現場の上司に共有すると、マネジメントに生かしやすいでしょう。

コミュニケーションの活性化

ツールを購入し、従業員が一人で抱えがちな悩みや本音を可視化できれば、日々のコミュニケーションで解消しやすくなります。上司部下間や同僚で積極的に相談したり、意見を伝えたりすることで、個人やチームのパフォーマンスが発揮されやすくなると同時に、組織の健全性が保たれます。風通しの良い組織作りは、離職率が低くなります。

人事担当者の工数削減

離職リスクを早期発見できることは、びっくり退職を減らすことにつながります。急な退職は、替わりとなる人材を既存社員から割り出したり、新たな採用が必要になったりと、人事担当者の工数がかかるため、予め離職の可能性を察知できることは大きなメリットです。人材育成の観点でも、コストをかけて育てた人材が定着することは、効率化につながります。

定着率向上に役立つツールの選び方・ポイント

離職防止や定着率向上ツールは豊富にあるため、自社の課題や導入条件に合わせて選ぶ必要があります。選ぶ際にポイントとなる観点や参考にすべき情報を解説します。

機能性・デザイン

具体的にどんな機能性やデザインを重視すればよいか、また重視したほうが良い理由

ツールの主な機能として、従業員のコンディションを把握するためのアンケートがあります。自社でチェックしたい質問で運用できるかや、週や月など頻度高く利用する場合は手間なく回答できる操作性かどうかを見定めましょう。従業員が抵抗なく使えれば、高い回答率が期待できます。

また、従業員個々の回答結果を集約し、組織単位で分析できる機能があります。ツールの種類やプランによってグラフ表示方法や分析軸に差があるため、分析しやすさもチェックしましょう。

導入費用

クラウド型のツールを利用する際、初期費用は発生せず、利用するユーザー数によって月額利用料を支払う料金体系が一般的です。自社で必要な機能を洗い出し、充足できるツールやプランを選びましょう。

大企業の場合は、オプション追加などで自動化できる範囲を広げると、業務効率化のメリットが大きくなります。企業規模や回答頻度などの運用と費用のバランスを考えて検討することがポイントです。

フォローや研修サービスの有無

ツールを導入して運用を開始する前に、社内説明や初期セットアップ、運用体制の整備などが必要です。従業員向けのマニュアルや研修があるかや、自社に最適な初期設定や推奨となる運用体制についてアドバイスがあるかなど、サポート面をチェックすると、導入後慌てずに済みます。

同業他社の事例を参考に

ツールのWebサイトでは、導入企業の事例を掲載している場合があります。自社より先駆けて導入し、効果を挙げている事例を参考にすると、実際のイメージがつきやすくなるでしょう。特に、同業他社の事例は、ツール導入の経緯や離職要因が似通っている可能性が高いため、自社運用に直結しやすくなります。つまずいた点と乗り越えたエピソードや、使い方の工夫、社内浸透させる方法など、事例から学べる情報は多くあるため、有益です。

まとめ

従業員の定着率向上は企業共通の課題であり、いかに優秀人材を定着させるかは、事業スピードや社外からの評価にも影響します。人材定着に効果的なツールを導入し、従業員個々のフォローだけでなく、組織に存在する課題を顕在化させ、手遅れになる前に対策を打つことが大切です。

また、ツールの導入から離職リスクが把握できるまでには、一定期間、運用を回す必要があるため、早い段階でツールを選定し、社内の特定部門や特定年次にターゲットを絞り、試験的にスタートするのもおすすめです。社内の反響を聞きながら、より実態を把握しやすく改善を続けることで、コンディション調査、分析、フォローまでのPDCAの質が向上するでしょう。

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